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8. いじめっ子を作らないために①

        「聞く」

2013年10月6日

いじめの加害者を作らないためには、どう育てればいい?
……という、簡単には答えが出なさそうな疑問を出して
前のコラムを終えておりました。

まずはいじめる子の気持ちを知ろうと思い、
本を読んでみました。
すると、

・目の前に笑えるネタが転がっている、
・ムカつく気持ちをどこかにぶつけたい、
・いつも大人には「良い子」の自分を見せていたい
・ふざけてるだけ。いじめなんかではない
・自分が強くなったような気がする

などだそうです
(『友だちをいじめる子どもの心がわかる本』講談社)

子どもはきっとストレスやイライラでいっぱいで、
その量や程度が尋常じゃないのでしょうね。
この負のエネルギーをいじめに向かわせないためには、
結局は「子どものすべてを受け入れる」ことに
尽きるのかな、と思います。
「子どものすべてを受け入れる」なんて言葉、
耳にタコが何百個もできるくらい聞いてるし、読んでるし、
当ったり前すぎて何のインパクトもないのだけれど、
やっぱりそれがポイントなのだと思います。

具体的にどうするか。
超シンプルでガクッときそうですが、まずは
子どもの話を、ちゃんと集中して聞くことでしょう。
良しあしの判断をせず、アドバイスもせず、
気持ちに寄り添うことに専念して聞く、ということ。
(先日お会いしたカウンセラーの方は、
クライアントさんのお話を、全神経を集中させて
一生懸命聞くとのことで、90分が限界だそうです)。

話す側は、聞いてくれる相手から
好意的なメッセージを受けているはずです。
アイコンタクトがあり、相槌があり、
「そうなんや~」「それは腹立つよねえ」と共感の言葉があり、
場合によってはハグもあり……。
だから安心して話ができます。
ワタシなら、ついしゃべりすぎてしまいそう。

もちろん親は、毎回こんな風に
腰を据えて聞けるわけじゃありません。
でも相談事などの大事な局面でこうやって聞いてあげたら、
子どもには、「聞いてもらえた」
「受け止めてもらえた」という
経験が積み重なっていきます。

それに普段のあいさつ程度のやりとりでも、
ちゃんとアイコンタクトを取って優しい口調で言えば、
それはそれで、子どもにとって嬉しい会話になります。

それも入れると、それこそ何千回、何万回と
あったかい会話が積み重なっていくわけです。
その都度、子どものストレスは減り、
逆に、安心感や自己肯定感は強くなります。
すると自信もつきやすくなるし、
自信や自己肯定感が強ければ逆境にも強くなります。

そんな変化は、その場で目に見えるものではなから
あったかい会話ができることに
ありがたみを感じる人は少ないでしょうけど、
当事者にはその効果が無意識のレベルで
蓄積していると思います。

ところがもし、積み重なった経験が
あったかいやりとりじゃなくて、
そっけないものだったら? 
子どもが話をしたくても「今忙しいからダメ」と言ったり、
しぶしぶ聞いているのがまるわかりだったり、
しょっちゅう「それはあなたが~したからでしょ」と
口をはさんだり。
ワタシなら、話さなきゃよかったと思いそう。
受け入れてられている、とはとても思えないでしょう。
子どもならなおさらです。

そんなやりとりが、長い親子生活の中で
何千回と積み重なっていったら、
ストレスは減るどころか増えるだろうし、
安心感より怒りや不安が大きくなり、
自己肯定感は弱まるかもしれません。
こちらの変化も目に見えないので、
その影響が当事者(特に子ども)の心に
蓄積しているだろうということには
気づきにくいと思います……。

もちろん、親子のやりとりは「聞く」「話す」だけに
とどまらないので
「じっくり聞くこと」ができないとダメ!と
いうわけじゃありません。
でも「じっくり聞く」は、
コミュニケーションの基本中の基本。
なのでときどき、自分がどういう態度で子どもの話を
聞いているかを振り返ることは、
すぐにも役に立つのではないでしょうか。

忙しくてついテキトーな聞き方になってしまうと思ったら、
「今忙しくてちゃんと聞けないの。これが終わったら
しっかり話を聞きたいから、それまで待っててちょうだい」
と言い、忙しいけれど聞く気持ちがあることを
伝えたらいいと思います。
(もちろん後でちゃんと聞くんですよ)
話を聞く時間を決めるとなおよいでしょう。

子どものことを心配するあまり、根ほり葉ほり子どものことを
聞き出そうとすることがありますが、
子どもの年齢があがるほど逆効果ですよね。
その辺のさじ加減が難しいです。
でもいざというときは、
両手を広げて「飛び込んでおいで!」という
イメージで話を受け止められるよう、
意識しておきたいものです。

とにかく、話しやすい関係を日頃から築いておく、それが大事。
子どもが話を聞いてもらえずストレスをためつづけ、
やがて気の弱い「友達」に向けて爆発した、
となっては悲劇ですから……。


 

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